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Law


移民法・雇用法ニュース
移民法改正大統領令裁判

2016年4月18日に米国連邦最高裁は、現在一時的に施行を差止されている移民法改正に関する大統領令の一部の合法性に関し、テキサス州を始め初めとする26州と米国連邦政府の間で口頭弁論が展開された。問題となっているのは、2014年11月に発表された大統領令で、現行の不法滞在者に与えられている救済措置(DACA)の適用範囲を拡張し、より多くの不法移民に対して救済措置をとるという新DACA措置である。この大統領令により、米国に5年以上滞在している犯罪歴のない者で、子供の時に不法入国した者は短期的な滞在資格を認められる。2012年のDACA案では、2007年以前に16歳未満の時に米国に不法入国した者が対象であったが、今回の大統領令では対象者の範囲が拡大され、2010年までに入国した者が含まれる。さらに、家族の離散を極力防ぐために米国市民権や永住権保持者の親(DAPA)にも救済措置を与える。これにより米国内に滞在するおよそ1100万もの不法移民のおよそ半数が救済措置の対象になるとみられていた。ところが、発令翌月には保守的な南部州を中心に26州が、オバマ大統領の発令は越権であるとして南部テキサス州の連邦地裁に提訴した。その結果、2月18日から開始する予定であった新DACAとDAPAの申し込みを受け付けが一時的に差し止められることになった。

これに対し、連邦政府は連邦最高裁に上訴し、今回の口頭弁論に至った。連邦政府側はテキサス州政府には当事者としての適正資格(standing)を満たしていないと訴えているのに対し、テキサス州政府側は大統領にはこのような法律を独自に決定する権限がないと反論している。テキサス州政府はより多くの不法移民に運転免許を与えることで州政府の経済的負担が増大するので、当事者として利害関係があると主張しているが、就労許可証の発行によりこれら不法移民がもたらす税収入やその他経済効果については触れていない。

大統領の権限については、ケネディー判事はオバマ政権の今回の方針 は越権であるとコメントしているが、退去処分対象者の優先順位を決めるのは、今までの歴史からみても連邦政府の裁量内であるとテキサス州側も認めている。つまり、公共・国家・国境の安全を重視し、重犯罪者の退去を優先するという方針を打ち出すこと自体に意義をとなえているわけではない。しかし、米国に対して無害な犯罪歴のない不法移民よりも重大犯罪者の退去を優先すべきというオバマ政権の方針に対し、不法移民の退去のを優先視しないことで州政府の財政負担が増加するような方針を施行すべきでないとテキサス州政府側は主張している。それに対しソトマイヤ判事は、好むと好まざるとにかかわらず、11ミリオンもの不法移民の存在自体が重度の経済的影響力をもっていることは否めないとコメントしている。今回のテキサス州の主張を容認してしまえば、今後、連邦政府がその権限内にて方針を打ち出すたびに、各州政府が"同意できない"という理由で、ありとあらゆる方針に対して訴訟問題が持ち上がる可能性がでてくる。その都度、訴訟には多大の税金を使うことになってしまう。

保守派のスカリア判事が逝去したことで、9人目の判事が任命されるまで連邦最高裁8人の判事は保守派とリベラル派の半々に分かれる可能性がある。法廷内でもDACAに対する見解が分かれているようにみうけられるが、6月に発表される裁判判決が5万人もの人々の人生を左右することになるであろう。

執筆:大蔵昌枝弁護士
フィッシャー・ブロイルズ法律事務所


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About Writer

大蔵昌枝弁護士

東京外国語大学中国語学科卒業。サウス・カロライナ州サウス・カロライナ大学ロースクールおよびビジネススクールのJ.D./MBA ジョイント・ディグリー課程卒業、法律博士 (Juris Doctor) および経営学修士 (MBA) の学位を授与される。在学中は、会計監査、法律文書レビュー、外国人学生の移民法関連アシスタント業務などに従事。
2004年にジョージア州弁護士資格取得。
Ogletree, Deakins, Nash, Smoak & Stewart, P.C. 法律事務所、Baker, Donelson, Bearman, Caldwell & Berkowitz, PC 法律事務所に勤務の後、現在は、フィッシャー・ブロイルズ法律事務所に勤務。雇用法・移民法など日系企業に関わる法律相談。日系のメディアに雇用・移民法記事を掲載。移民法講義やセミナー講師を務める。

著書: アメリカの陪審制度と日本の裁判員制度、陪審制度の発展と意義 (出版社:エディックス ) ”日本図書館協会選定図書” "The American Jury and the New Japanese Judicial System" The Historical Development of the U.S. Jury System, February 10, 2011