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Law


移民法・雇用法ニュース
飲酒運転とビザの取消

2015年11月に国務省は、米国の非移民ビザの発行をうけたものが、ビザ発行後に飲酒運転 (DUI=driving under the influence) で逮捕された場合、各国の米国大使館・領事館に対しビザを取り消すよう指示をだしました。ビザとはパスポートに貼られるビザ・スタンプのことで、米国に入国するために必要なものです。通常米国外にある在外公館には米国内にいるもののビザスタンプを取り消す権限はありませんが、米国政府は飲酒運転を大変問題視しており、特別に例外措置を設けたものとおもわれます。

飲酒運転で逮捕された場合、初犯であれば、過去の逮捕歴、違法物所持、第3者に対する人身障害、など重度の追加違反行為がない限りは、ほとんどの州では軽犯罪の判決がいい渡されるようです。軽犯罪だと、判決文を全てまっとうすれば、基本的には滞在資格に影響したり、将来のビザ申請を妨げるものではありません。

しかしながら、飲酒運転逮捕歴がある場合は、米国大使館や米国領事館でのビザ申請時に裁判記録を一式提出し、FBIのバックグランドチェックをされるので、ビザ申請は通常よりも長くかかることがあります。また、在外公館は、いままで過去5年以内に飲酒運転の逮捕歴がある人、もしくは過去10年間に2回以上飲酒運転の逮捕歴がある人、またアルコール依存症だと思われる短期ビザ申請者に対しては、大使館指定医師からの健康診断書の取得を要請することがあります。診断の結果、アルコール依存症による精神障害があり、かつ過去の飲酒経歴から判断して、今後自分自身や第3者の安全もしくは所有物に対して危害を加える可能性があるなどのビザ発行拒否理由に該当しないことを確認してからビザを発行しています。

ビザ申請時には飲酒運転逮捕歴がなく、ビザ発行後、米国に入国してから飲酒運転で逮捕された場合、いままでは一旦発行されたビザが取り消されることはありませんでした。この場合、次回のビザ更新申請時に逮捕記録の表明を行えばよいことになっていました。ところが、今回の方針で、ビザ発行後に飲酒運転で逮捕された人も、一旦ビザを取り消され、申請書類に飲酒運転逮捕に関する情報を開示して、新たにビザを申請しなおす必要がでてきました。ビザを取り消されるのに有罪判決は必要ではなく、5年以内にDUIの逮捕歴があればこの対象になります。

ビザの取り消しに至る手順としては、飲酒運転逮捕の際、指紋押捺により国務省に逮捕の連絡がはいり、これを受けて国務省は在外公館に連絡をし、米国大使館や米国領事館はこれに基づいてビザ取消通知を発行します。ただし、ビザの取消は国外退去処分ではないため、すでにアメリカ国内にいる人の滞在資格(I-94)が抹消されるものではありません。したがって、国外に出ない限り、アメリカ国内での滞在はそのまま有効です。しかし、ビザが取り消された後に国外に出た場合、再び米国に入国するのに有効なビザが必要になるので、在外の米国大使館か米国領事館にビザ面接予約をいれ、ビザ申請書類にDUI逮捕歴を開示して新たなビザの申請を行います。飲酒の程度によっては、さらに医師の診断書を取得するようにいわれることもあります。その結果、自身や社会に脅威や危害を加えるような障害がない、もしくはアルコール依存症ではないと判断されれば、ビザは発行されます。

なお、国外に出ている間にビザが取り消された場合、米国に入国できなくなる可能性があるので、飲酒運転の逮捕歴のある人は、米国を出国する前に人事に連絡をとり、国外でのビザの再申請に関して事前に準備する必要があるでしょう。

執筆:大蔵昌枝弁護士
フィッシャー・ブロイルズ法律事務所


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About Writer

大蔵昌枝弁護士

東京外国語大学中国語学科卒業。サウス・カロライナ州サウス・カロライナ大学ロースクールおよびビジネススクールのJ.D./MBA ジョイント・ディグリー課程卒業、法律博士 (Juris Doctor) および経営学修士 (MBA) の学位を授与される。在学中は、会計監査、法律文書レビュー、外国人学生の移民法関連アシスタント業務などに従事。
2004年にジョージア州弁護士資格取得。
Ogletree, Deakins, Nash, Smoak & Stewart, P.C. 法律事務所、Baker, Donelson, Bearman, Caldwell & Berkowitz, PC 法律事務所に勤務の後、現在は、フィッシャー・ブロイルズ法律事務所に勤務。雇用法・移民法など日系企業に関わる法律相談。日系のメディアに雇用・移民法記事を掲載。移民法講義やセミナー講師を務める。

著書: アメリカの陪審制度と日本の裁判員制度、陪審制度の発展と意義 (出版社:エディックス ) ”日本図書館協会選定図書” "The American Jury and the New Japanese Judicial System" The Historical Development of the U.S. Jury System, February 10, 2011